Columnバックステージツアーコラム

第1回この劇場は、なぜ「オーブ(球体)」なの?

 皆さんにとって劇場って、どんなイメージなのでしょうか?劇場通いが日常になっている、いわゆる“シアターゴーアー(劇場に行く人=Theatre Goer)”は、ほんの一握り。一般的に劇場は、敷居が高い、内容が難しそう、服装に困るなどの理由から、敬遠している方も多いはず。映画は気軽に見るけど、ミュージカルはちょっと…と躊躇する方もいらっしゃることでしょう。
 でもね、劇場ってそんな遠い存在ではないんですよ。特にミュージカルは誰もが楽しめる内容だし、服装だって小ぎれいなカジュアルでOK。何より、ステージ上の生身の人間が発するエネルギーは、並大抵のものではありません!面白いのは、劇場では観客もキャスト同様、作品の一部になれること。このライブの参加感は映像では味わえない、特別なものです。そして一歩、劇場に足を踏み入れてしまえば、完全に日常から隔離されて、どこかに旅行したくらいの勢いで、物語にどっぷり浸れてしまう。例えば、気分転換したい時、また家族や友達、大切な人と思い出を作りたい時、劇場はぴったりな場所なんです。
 特にミュージカル専用劇場である東急シアターオーブは渋谷駅の真上、渋谷ヒカリエ11階にあり、アクセスの良さが抜群。ビルの高層階に劇場があるというのは世界的にも珍しいことで、海外から来た俳優たちはいつも「こんな劇場は見たことがない!」と 驚きます。ガラス張りのホワイエからは渋谷の街並みが見下ろせて、昼はラッキーなら富士山が望め、夜はきらめく夜景を楽しめる、そんなプラスアルファも付いた劇場というわけです。

 前置きが長くなりましたが、やっと本題。
 そんな東急シアターオーブのバックステージツアーに参加したら、普段、観劇するだけでは気づかない劇場の魅力、へえ!と感心することがたくさん。その様子をレポートしますね。
 まずはロビーで集合し、簡単なレクチャー。
 東急シアターオーブが入っている複合ビル・渋谷ヒカリエはもともと東急文化会館の跡地に建てられたもの。1956年に作られた東急文化会館は、「最先端の娯楽を提供する」施設でした。当時、珍しかった化粧品メーカーの直営美容室、シネマコンプレックスの先駆けとなった4つの映画館、そして五島プラネタリウム。そういえば、ビルの屋上のぽっこりした球体は渋谷の象徴だったなぁ(懐)。そのプラネタリウムの球体のデザインと最先端の娯楽を発信する使命を引き継いだのが、東急シアターオーブというわけです(“オーブ”は球体の意味 )。
 また正面に位置する階段を上がったところに飾られた織絵のデザインは、近代建築の巨匠ル・コルビュジエによるもの。4つの映画館のひとつであったパンテオンにかかっていた緞帳を、西陣織で5分の1のサイズに織り直している。劇場の中にこんな芸術品があるのを、皆さんはご存知でしたか?
 モダンな劇場の由来を紐解いたところで、劇場内に移動し、いよいよ劇場探検開始です!

つづく

演劇ライター 三浦真紀