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2016.05.24 UP

北米ツアー観劇レポート!

4月にミネソタ州ミネアポリスにあるオルフェウム劇場で観た『ヨセフ〜』の観劇レポートをお届けしよう。約2600席という大劇場だが、6日間の公演がソールドアウト。人気のほどがうかがえる。

 

 

 着席すると、舞台上スクリーンには煙のようなものが映し出され、汽車、帆船、宇宙飛行士へと形を変える。眼をこらすとパジャマ姿のヨセフがベッドですやすや…と、ヨセフが目覚めた。ワクワクするメロディが別世界へと私たちを誘う。エキサイティングな心の旅の始まりだ!

 現代に生きる私たちは、学校で学び、ノートブックパソコンを持つようになり、大人へと成長する。子供の頃はたくさんの夢に囲まれていても、いつしか夢見ることを忘れてしまう。夢は人生にとって、なくてはならないもののはずなのに。昔々、人生が思うようにいかず、それでも夢見る力で自分の道を拓いた男がいた。それがヨセフ。ナレーターの華麗な歌声が、観る者を彼の数奇な人生へと導いてくれる。

 このプロダクションの特徴は、何と言ってもダンス。ジャズ、コンテンポラリー、バレエ、ストリート、タップなど様々なスタイルを取り混ぜて、キャストは踊りっぱなし。ヨセフには父ヤコブと12人の兄弟がいるが、この一族といったら嬉しい時はもちろん、飢えた時も辛い時もすぐに踊り出すから愉快だ。極め付けはフィナーレの「ヨセフ・メガミックス」。生命力と喜びに溢れた8分間のダンスショーに観客は総立ち。拍手が鳴り止まなかった。

 もちろん柱はアンドリュー・ロイド=ウェバーの音楽で、その鮮やかでみずみずしいことといったら!『ヨセフ』は1967年、ロイド=ウェバーが学生だった時、ティム・ライスと組んで初めて商業用に作った原点的作品。きらめくメロディや重唱の厚さ、ロックな疾走感など、後に生み出される『ジーザス・クライスト=スーパースター』『エビータ』『キャッツ』『オペラ座の怪人』の片鱗が聴き取れる。バラード、ロック、シャンソン、カントリー、カリプソなど曲想は幅広く、思いついた曲をそのまま詰め込んだような自由闊達さは見事。それらの曲を演出・振付のアンディ・ブランケンビューラーが身体の言語に落とし込み、質の高いダンスミュージカルとして完成させている。

 気づきの多い物語だが、余計な蘊蓄はいらない。歌とダンスの力で耳福眼福!明日へのエネルギーを蓄えられるに違いない。

 

演劇ライター 三浦真紀

 

                                                              舞台写真 田中克佳